[ブログ] 精霊流し

2019/08/21

院長の里である長崎県島原市ではお盆に精霊流しを行う風習があります。
さだまさしさんの「精霊流し」の歌で有名な精霊流し。皆さんは精霊流しといえば長崎市の精霊流しを思い浮かべてられると思いますが、島原市でも300年以上前から精霊流しが行われています。島原の乱のあと、人々の心の安定化を図るため祖先の御霊を祀り、その冥福を祈るための盂蘭盆会として精霊流しが始まったようです。

今年は父の初盆のため帰省し、8月15日に精霊船を担いできました。
初盆の家には親戚や知人から切子燈籠が贈られます。それを藁舟に組まれた竹竿にくくりつけ、灯篭にろうそくを灯して、担ぎ練り歩き最後は海に流します。燈籠が多いときは一軒船が出ることもありますが、多くは町内会で初盆の家をまとめて船を出します。今年は私の町内では三件の初盆があり、170個の灯篭を藁舟にくくりつけた精霊船が出来上がりました。灯篭をくくりつけた精霊船は重く、高齢化した担ぎ手の肩に食い込みますが、お盆で帰省した子供や孫たちも加わり担ぎ手が構成されます。今年は全部で46隻が作られたそうです。

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しめやかなイメージの精霊流しですが、南無阿弥陀仏をもじった「ナマイドー」の掛け声と共に、爆竹の音の中練り歩く勇壮な盂蘭盆会です。先達の町内会長の仕切りの元、老いも若きも一緒になって担ぐ行事は都会ではみられない郷愁を覚えます。長崎の精霊流しは車で引きますが、島原は自分たちで3時間あまり担ぐこと、最後は海に入り有明海に浮かべる姿の美しさから「島原の精霊流しが本当の精霊流したい」と地元民はこの行事を誇りに思っています。

 

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精霊船は初盆の家の前で一旦止まり、地域の人が藁舟の舳先に作られた線香立てに線香を灯して手を合わせます。初盆の家を地域の人みんなでお祈りしてくださるわけですから、親族としては本当に「ありがたかー」という気持ちになります。

私が精霊船を担ぐのは何十年ぶりです。親友のお父さんが亡くなった時に、同級生みんなで威勢良く担いで海まで泳いで見送ったことを思い出します。今年は台風10号のため海に流すことはできませんでしたが、流す頃には雨がピタリと止んで、満月に見守られてお盆に帰ってきた父を見送った忘れられない精霊流しとなりました。