[ブログ] 2019年 新年挨拶

2019/01/07

新年、あけましておめでとうございます。

峯クリニックは茨木市に開業して15年、移転開業して早いもので3年になりました。

昨年は自然災害の多い、大変な1年でした。クリニックのある茨木市も6月の大阪北部地震においては、建物の倒壊、屋根や壁の損傷、ライフラインの寸断を含む大きな被害が生じ、ブルーシートが解けないまま、たび重なる台風が訪れ、とりわけ8月の21号の暴風は命の危険を感じるほどの激しさで、市民生活が脅かされました。多くの方が被災され、その爪あとは今なお残ったままであることに心が痛みます。また世界中が自国の利益中心に動くようになり、不穏な政治情勢が続いています。今年は元号が変わり、新しい時代に希望を持ちますが、気を引き締めて自らの足元を見つめて、堅実に医療活動を進めてゆきたいと思います。

 さて院長は日本東洋医学会に所属しており、昨年は総会において二つのシンポジウムを担当しました。ひとつは、師匠であった三谷和合先生を語るシンポジウムでした。和合先生は、患者さまひとりひとりの日常の生活を知ることを重視し、個の医学の確立を追及したこと、一方で患者さまの健康を保つための社会制度を重視し、当時、制度の確立していなかった訪問診療や、訪問看護をおこなったこと、保険収載がなかった漢方を保険適用にする運動をすすめたこと、患者さまを東洋医学の理念を軸にして最期までみとる病院を作り上げたことなど、今思えば時代に先駆けたたくさんの医療活動をおこないました。「医療を患者さまのもとにとりかえす。」そんな気概で昭和の時代を駆け抜けた師匠でした。「峯君、漢方でうまい飯が食えると思ったら大間違いやで。」「君は薬、薬というけど、その前に患者さんの話をよう聞いてあげたか、薬なんてあとあと」「病気をみるんやない、病人さんをみるんや」「漢方使いになるな、漢方医になれ」和合語録は尽きることがありません。和合先生の教えを再確認して新年に望みたいと思います。

 もうひとつは黄耆というひとつの生薬に的をしぼったシンポジウムをおこないました。黄耆という生薬は、免疫力を高め、傷の治りをよくし、身体を元気にする作用があります。近年では腎不全や慢性腎臓病に対する効果、筋肉を強くする効果が知られはじめています。

多彩な黄耆の薬効を一元的に捕らえ、黄耆の正体を見極めたい。そういう思いでシンポジウムを開催しました。一味の生薬が身体全体にどのように作用するかを知ることによってし、その生薬を含む方剤の理解や応用を今後もさらに深めてゆきたいと思います。

 今年は黄耆に続いて当帰や地黄といった「血に栄養を与える」一味の生薬の薬能、薬理から処方を考え、また五臓においては腎についての理解を深めていきたいと思います。東洋医学の腎は、生まれつき備わっている元気のもと、生殖活動に関与し、年齢とともに消耗して衰えるとされ、腎の元気を保つことは、身体全体の元気、老化の予防に対して重要な意味を持ちます。高齢化社会に向けて漢方の立場からも貢献できるよう取り組んでまいります。

今年もよろしくお願いいたします。