【ブログ】【第23回 漢方歳時記 十一月 ― みかんと陳皮】

2026/11/01

十一月七日は立冬。暦の上では冬の始まりです。朝晩の冷え込みが増し、こたつや暖房が恋しくなる頃、店先には色づいたみかんが並び始めます。こたつでみかんをむく光景は、日本の冬の風物詩といってよいでしょう。

みかんの実は、皮をむいて食べたら終わり……と思われがちですが、漢方ではむしろ皮のほうが主役です。温州みかんの皮を干したものが、生薬の「陳皮(ちんぴ)」です。「陳」は古いという意味で、年月を経て香りの角がとれたものほど良品とされてきました。古いほど良いとされる生薬は古来「六陳」と総称され、陳皮はその代表格です。

陳皮は味が苦く辛く、性質は温。気の巡りを整えて胃腸の働きを助け、余分な水分や痰をさばく働きがあるとされます。胃もたれや食欲不振に用いる六君子湯、疲れやすさに用いる補中益気湯、気分がふさぐときの香蘇散など、多くの処方にさりげなく配合されている、いわば名脇役です。身近なところでは、七味唐辛子の一味にも陳皮が入っています。

秋から冬へと移るこの時期は、秋の「肺」から冬の「腎」へと養生の主役が移る変わり目です。寒さで身体がこわばると、気の巡りも胃腸の働きも鈍りがちになります。加えて、乾燥した空気は、のどや気管支に痰の絡みやすさをもたらします。気を巡らせ、胃腸を助け、痰をさばく陳皮は、まさにこの季節にふさわしい生薬といえるでしょう。

ご家庭では、よく洗ったみかんの皮を天日で干しておけば、刻んでお茶に浮かべたり、布袋に入れてお風呂に浮かべたりして楽しめます。できれば無農薬のものを選んでください。部屋に広がる甘酸っぱい香りだけでも、ふっと肩の力が抜けていくのを感じられるはずです。

一個のみかんを、実も皮も余すところなくいただく。そんな昔ながらの知恵を味わいながら、冬の入り口を穏やかに迎えたいものです。