[ブログ]【第20回 漢方歳時記 八月 ― 西瓜と夏のからだ】

2026/08/01

八月。蝉の声が降りそそぎ、陽射しは一年でもっとも強く、空気までもが熱を帯びてゆれるようです。汗は止まることを知りません。そんな盛夏の食卓に、よく冷えた西瓜が運ばれてくると、それだけで身体の奥がすっとほどけていくように感じます。
西瓜は、漢方では古くから暑気あたりを癒やす果実として重んじられ、「天然の白虎湯」とも呼ばれてきました。白虎湯とは、燃えさかるような熱を冷ます代表的な処方です。みずみずしい果肉には清熱・解暑・除煩・止渇の働きがあり、ほてったからだの熱を冷まし、わき上がるいらだちを鎮め、渇いた喉をうるおします。津液(身体の水分)を補うと同時に利尿作用もそなえ、余分な熱と水を、汗とはまた別の道からそっと外へ運び出してくれます。
東洋医学では、夏は「心」の季節とされています。汗をかきすぎると、うるおいである津液とともに、生命の勢いである気までもが漏れ出てしまいます。だるさ、食欲のなさ、寝つきの悪さ――いわゆる夏バテは、こうして気と津液がともに消耗した姿でもあります。
ただ、夏バテの大きな原因は、暑さだけではありません。冷房の効いた部屋で起こるクーラー病や、冷たいもののとりすぎによる胃腸の冷えも、見落とせない一因であることを、ぜひ知っておいてください。暑い外から帰って、最初に冷たいものを一杯飲むのはかまいません。けれども、できれば一気にゴクゴクゴクと飲み干すのではなく、ゴクンゴクンと何回かに分けて、胃腸をおどろかせないように。そして冷房の部屋で汗がおさまったら、今度は熱々の飲み物を口にして、内側から胃腸が冷えるのを防ぎたいものです。
西瓜の涼やかさで火照りを冷ましつつ、冷やしすぎにはそっと気を配る。冷ますことと、いたわること。その兼ね合いを忘れずに、漏れ出ていくものを少しずつ補いながら、夏を健やかに過ごしていきましょう。