[ブログ]第74回日本東洋医学会 その2

2024/05/29

第74回日本東洋医学会 その2

「儒教の身体観」加地伸行氏講演

次は、加地伸行先生による「儒教の身体観」の講演の座長を務めるので企画者としての思いを語ります。

 

 

総会のテーマは「病人さんに還る」です。三谷和男先生のお父さんの三谷和合先生が私の師匠で、和合先生の口癖は、「病気じゃなくて病人をみよ」。和合先生は、国民誰もが平等に医療を受けることができなければならないと、当時、自費治療だった漢方治療が保険適用になるよう努力されたり、無医村に健診活動に出かけたり、リウマチや高血圧の患者会を組織したりと学問だけでなく実践の方であり有言実行の人でした。その思想的背景のひとつが加地先生の解く儒教の中国哲学にあったのです。

 加地伸行先生は元大阪大学文学部中国哲学科の教授で、儒教の始祖である孔子研究の第一人者です。和合先生は古くから加地先生と親交があり、今から35年ほど前、私は、和合先生院長の加賀屋病院の会議室で周礼、史記扁鵲倉公列伝、公孫竜の名物論などのお話を加地先生より伺いそのレポートを雑誌に投稿したことがありました。。

和合先生の口癖であった「病気でなく病人をみよ」という言葉には、名と物の関係を正すという名物論という儒教の哲学的背景がありました。色や形にまどわされずに、物事の本質をいつもみなさいという和合先生の言葉は今でも胸に浮かびます。加地先生によると儒教は沈黙の宗教で、日本人の心身に儒教の身体観が生きていると言われます。胃潰瘍、悪性リンパ腫、がん、脳梗塞などの病名は患者さんそのものではありません。病名は大事ですが、正しい診断をした上で私たちは病人さんそのものに戻る必要があるのです。それが今回の総会のテーマである「病人さんに還る」ということです。そして儒教の身体観の本質は、先祖、両親、自分、息子娘、孫と生命が脈々とつながっている事。墓参りをして先祖を大切に思う心は日本人に根付いている儒教の深い宗教性だと加地先生は解かれます。

 加地先生は孤剣楼という号を持つ論客でもあります。三谷和男会頭のもと、先生の講演を企画するのは、私の長年の夢でした。先生はご高齢になりましたが、なんとか間に合いました。令和6年6月1日その夢が叶います。きっと熱い講演をしてくださると思います。