[ブログ]【第12回 漢方歳時記・年末号 来年もどうぞ健やかに ― お屠蘇のおはなし】
2025/12/05
今年もついに12月、師走が訪れてしまいました。おびただしい毎日の中、来年がどんな年になるのか気になる季節となりました。当院では毎年、患者様の1年の健康をお祈りして、お屠蘇をお配りしています。数に限りがあり、皆様にお配りできていないのが申し訳ないのですが、お屠蘇の由来について紹介したいと思います。
正月の朝にいただく「お屠蘇」は屠蘇散という漢方薬であり、一年の無病息災を願う古い養生法です。屠蘇の“屠”は邪気を祓う、“蘇”はよみがえるという意味で、もともとは中国の名医・華佗が疫病除けとして考案した薬酒が原型といわれます。平安時代には宮中行事として定着し、江戸時代になると庶民の正月にも広がっていきました。
屠蘇散には桂皮・山椒・丁子・陳皮・白朮・浜防風・桔梗などの生薬が配されています。これらは体を温め、巡りを良くし、風邪を予防し、寒い時季の胃腸の働きを助ける薬草からできています。冬は五臓の「腎」が弱りやすく、気血も滞りがちになります。そんな睦月のからだを優しく目覚めさせるのが、屠蘇散の役割です。
作り方はとても簡単で、当院でお配りしているティーバッグを 日本酒またはみりん150〜200mLに一晩浸すだけ。元日の朝、明けましておめでとうの時に、盃にすこし注いでいただきます。日本酒とみりん両方入れて比を変えると、好みの味となったオリジナルのお屠蘇のできあがりです。お酒が苦手なときは白湯で、あるいは蜂蜜をいれていただくことも可能です。私は子供の頃、お屠蘇の味が大好きで、ひとりでこっそり何度も飲んで、真っ赤な顔になってしかられたことを思い出します。盃にほんのひとなめすればよいのです。
薬草の香りに包まれながら新年を迎えるひとときは、忙しさを忘れ、気持ちを整える時間になります。今年もどうぞ、健やかな一年となりますように。

