[ブログ]【第14回 漢方歳時記・如月 いのちを「資(たす)ける」季節】
2026/02/01
二月は、寒さの底にありながら、日差しの中にわずかな春の兆しが感じられる時季です。暦の上では立春を迎えますが、実際の身体はまだ冬の疲れを抱えたまま。食欲が落ち、足腰が重く、何となく力が入らないという訴えが増えてきます。
漢方では、こうした状態を単なる「冷え」や「老化」とは見ません。生命を支える材料が足りなくなり、身体を動かす力が弱っている状態、すなわち「資生(しせい)」が不足していると考えます。『素問』には「五穀は人の資生なり」とあり、食べたものが気血となり、身体を養うことの重要性が説かれています。
脚気の古い医案を読むと、この考え方がよく分かります。足が弱り、しびれ、やがて歩けなくなる脚気は、単に足の病ではなく、脾胃が弱って気血を生み出せなくなった結果として理解されていました。そのため治療の中心に置かれたのが補中益気湯などの「資生の処方」です。弱った身体を無理に動かすのではなく、まず材料を補い、支える力を立て直す――その発想は、現代の回復期医療にも通じるものがあります。
この季節にとくに大切にしたい生薬が山薬です。山薬は甘く穏やかで、脾・肺・腎を同時に養い、補っても滞らず、潤しても重くなりません。冬の消耗を受け止めながら、春に向けて身体を静かに立て直すのに適した存在です。とろろや煮物として日常に取り入れるだけでも、「いのちを資ける」一助になります。
二月は、何かを始めるよりも、まず整える季節です。無理に気合を入れるのではなく、食べ、休み、養うことを大切にする。そうして足元の力が戻ったとき、春は自然と身体のほうからやってきます。

