[ブログ]【第15回 漢方歳時記・弥生 ひな祭りとともに、開業二十二周年を迎えて】
2026/03/01
三月三日は雛祭り。桃の花がほころび、冬の名残と春の気配が交差する頃です。峯クリニックは、この雛祭りの日に開業し、今年で二十二周年を迎えることになりました。毎年この日を迎えるたびに、季節とともに歩んできた時間の重みを静かに感じます。
ひな祭りは、もともと子どもの健やかな成長を願う行事ですが、漢方の目で見ると「滞りを祓(はら)い、巡りを整える」節目の日でもあります。三月は、冬の間に内にこもっていた気が、外へと動き始める季節です。寒さで縮こまっていた体がゆるみ、同時に不調も表に出やすくなります。頭痛、めまい、胃腸の不調、気分の落ち込みなどが現れやすいのも、この時期の特徴です。
漢方では、この春の立ち上がりを「肝」の季節と考えます。肝は気の巡りを司り、情緒や自律神経とも深く関わります。巡りが滞ると、体だけでなく心にも張りが生じます。そんなときこそ、無理に頑張るのではなく、少し肩の力を抜き、一歩一歩、自然の流れに身を委ねることが大切です。
食養生としては、苦味や香りをほんのり取り入れるのがおすすめです。菜の花や春菊、ふきのとうなど、春野菜のほろ苦さは、滞った気を外へと導いてくれます。甘い菱餅や白酒も、ひな祭りの行事として楽しみつつ、食べ過ぎないことが養生です。
開業以来、季節の移ろいとともに多くの患者さんと向き合ってきました。病は突然現れるようでいて、実は日々の積み重ねの中に芽を出します。だからこそ、漢方は「今」を整えると同時に、「これから」を支える医学なのだと思います。
二十二年目の春。雛祭りの穏やかな気に包まれながら、これからも一人ひとりの体と季節の声に耳を澄ませ、丁寧な診療を続けていきたいと考えています。

